春、新入社員と初顔合わせとなるその日―。
毎年この時期になると
誰もが口にしたことがあるだろう
ありきたりな挨拶を、
また誰かの口からぽろぽろでてくるところを
ぼんやり眺めることになる。
そんな中、勢いよく飛び出してきた彼女の言葉が、
とにかく鮮明だった。
「私の目標は、表参道コレクションに出ることです。」
その年入社の彼女がスタッフに向けての自己紹介の際に
私たちに向けてはなった言葉だ。
細い肩をした、少し猫背な子。
黒髪マッシュの前髪は
だいぶのびてその大きな目を隠していた。
同期とぞろぞろ並んでいると
どちらかというと控えめな印象だったが、
その声は、
強く、ハリのある声だった。